ストレートのおっさんの胸をも打つ名作だった!
あらすじ
ルー(クリステン・ステュワート)と、ボディビルで名をあげることを目指しながら旅をしているジャッキー(ケイティ・オブライエン)が出会い、2人は恋に落ちる。しかし、町の裏社会を仕切るルーの父親をはじめ、ルーの家族が抱える闇に二人は巻き込まれていく…。
(公式サイトより)
スタッフ・キャスト
| 監督 | ローズ・グラス |
| 脚本 | ローズ・グラス ベロニカ・トフィルスカ |
| 製作 | アンドレア・コーンウェル オリバー・カスマン |
| 撮影 | ベン・フォーデスマン |
| 編集 | マーク・タウンズ |
| 音楽 | クリント・マンセル |
| 美術 | ケイティ・ヒックマン |
| 衣装 | オルガ・ミル |
| 役名 | キャスト | 役柄 |
|---|---|---|
| ルー | クリステン・スチュワート | 本作の主人公 父が経営するフィットネスジムのマネージャー(レズビアン) |
| ジャッキー | ケイティ・オブライエン | ラスベガスのボディビル大会出場のため、ヒッチハイクで街にやってきた女(バイセクシャル) |
| ベス | ジェナ・マローン | ルーの姉(夫からDVの被害を受けている) |
| ルー・シニア | エド・ハリス | ルーの父(表向きは射撃場経営だが、裏では銃の密売に手を染めている悪党) |
| JJ | デイヴ・フランコ | ベスの夫 |
| デイジー | アンナ・バリシニコフ | ルーに想いを寄せる元カノ |
| オライリー捜査官 | オリオン・カーリントン | FBI捜査官(ルー・シニアを操作している) |
見どころ
エド・ハリス!
本作でルーの父親ルー・シニアを演じた名優エド・ハリス。1950年11月28日アメリカニュージャージー州生まれの恩年75歳!今回の役柄は射撃場とジムを経営する裏で銃の密輸に手を染め、街を牛耳っている悪党役。明らかにイカれた人物だと一目でわかるヘアースタイルで登場し強烈な存在感を示していた。映画の後半では娘のルーに裏切られた怒りのあまり「うぉぉぁぁーーーーっ!」と叫び、大切に育てていたヘラクレスオオカブト(成虫)をパクッ。食べちゃう。(この演出をしたローズ・グラス監督って見た目に反してぶっ飛んでいる)
遡って1989年、ジェームズ・キャメロン監督の「アビス」。そこで彼は海底石油プラットフォーム”ディープコア”のリーダー役を演じていた。その熱演は今でも強烈に印象に残っていて、この「アビス」を観てからは登場するだけで嬉しくなる役者の一人になった。
男が全員クソ野郎
さて、この映画は1989年のアメリカが本作の舞台。ベルリンの壁崩壊の年。ちょうど前述の「アビス」が公開された年でもある。場所はニューメキシコ(傑作ドラマ「ブレイキング・バッド」と同じ舞台!)この時代と場所ということもあってとにかく登場する男が全員クソ野郎という設定。ルーの父ルー・シニアはもちろん、そのルー・シニアにカネで雇われてルー殺害を請け負うという警官もクソだ。
さらにもう一人、ルーの姉ベス(ジェナ・マローン)に暴力を振るうDV夫のJJだ。演じたのはデイヴ・フランコ。彼は2017年にセクハラで複数の女性から訴えられ最近めっきり露出が減ったジェームズ・フランコの弟!(俺が大好きなジョー・スワンバーグ監督・脚本のドラマ「イージー」(2016)にも出演していたので頑張って欲しい)
本作の監督脚本を手がけたイギリス人のローズ・グラスと共同脚本のポーランド出身のベロニカ・トフィルスカは実生活でもパートナー関係らしいので、本作はクイアがクイアを描いた映画。彼女たちから見れば当時の男たちがこうやって醜く描かれるのは至って自然なんだと思う。
一皮剥むけたクリステン・スチュワート
本作主人公ルー役のクリステン・スチュワート。初めて彼女を観たのは「トワイライト〜初恋〜」(2008)のベラ役だったから、今では完全に一皮むけている。
まさに ”甘クリ(ステン・スチュワート)むいちゃいました” という感じだ。
閉塞された環境の中で父や家族、恋人にかき乱されながらも愛に生きる主人公を演じていて、そこには後述のケイティ・オブライエンとのセックスシーンも含まれる。危なっかしくも真っ直ぐ生きようと奔走する姿が最高にイカしてた。
カート・ラッセルかと思ったら、ケイティ・オブライエン
ジムに入ってきたジャッキーにルーは一目惚れ!日に焼けたカート・ラッセルが入ってきたのかと思ったが、彼女はケイティ・オブライエンという超マッチョな俳優。 大学卒業後、警察に7年間勤務。パーソナルトレーナーの資格を保有。ボディビル大会に出場。という経歴の女性だ。ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニングにもキャスティングされているらしい。
ちなみにカート・ラッセルは1951年3月17日生まれで、なんとエド・ハリスと同い年、二人とも恩年75歳だった!時が経つのは早い。最近アマプラに「潮風のいたずら」(1988年)が入っていたのでまた観ようと思う。
デイジーのウザさ
ルーにゾッコンの元カノのデイジー(ジャッキーに出会ったルーはデイジーとの関係を完全に切りたいを思っているので、この時点ですでにウザい存在)。
このデイジーがめちゃくちゃ重要な役割を果たしていて、この映画を面白くしていた!
ジャッキーが勢い余って殺ってしまったルーの姉ベスのDV夫JJの遺体をJJのカマロのトランクに押し込み、遺体の隠し場所に向かう途中、カマロのハンドルを握り信号を待ちをしていたルーを見つけ、駆け寄り声をかけてくるデイジー。
デイジー:窓を叩き開けてとジェスチャーして声をかけえる「クルマ換えたの?」
ルー:「違う、い、いや、そう買い換えたの。」ヤベェときに見つかってしまい動揺しながら応じるルー
厄介な状況になったのを見て、後ろに連なってルーのトラックを運転していたジャッキーはクラクションを鳴らす
デイジー:後ろのクルマを見て 「あれ?後ろのクルマ、あんたのトラックじゃないの?」
ルー:デイジーの言葉を遮って「デイジー、今は無理だけど、ウィンキーズに行こうよ」
デイジー:「ほんと!明日?」誘ってもらって喜ぶデイジー
ルー:「そう、また明日!」 そう言って立ち去るルーとジャッキー
誰にも見られたくなかったところに現れるというデイジーのウザさが際立つハラハラシーン!このあとも無邪気にジワリジワリとルーを追い詰めていく。このデイジーを演じたのはアンナ・バリシニコフ。彼女はなんと主題歌「セイ・ユー、セイ・ミー」で有名な映画「ホワイトナイツ」(1985)に出演したバレエダンサーで俳優のミハイル・バリシニコフの娘だった!
ちなみにこのハラハラシーンのあと、事件に関する目撃者となったデイジーはルー・シニアの指示を受けたジャッキーに頭を撃ち抜かれたれてしまうんだけど・・・。
ラストシーンが最高
映画の終盤、デイジーの遺体を荷台に乗せ、ルーとジャッキーは父から逃れて愛の逃避行をキメ込む。
街から遠く離れたところでトラックの荷台からドンッ、ドンッ、という音が入ってくる。ルーがバックミラーに目を移すと死んだはずのデイジーが荷台でモゾモゾと動いている。
ジャッキーは助手席でぐっすり眠っている。
ルーはクルマを路肩に寄せ、荷台に上がって遺体を包んだ絨毯を捲るとデイジーの目は開きこちらを見て何か言おうとしている。ルーは ひと呼吸おいてデイジーの首を絞める。
そしてデイジーの遺体を荷台から下ろし路肩の荒地にひとりズルズルと引きずっていく。
ルーは「ふーっ」とため息をついたあと、禁煙していたルーだったが、遺体と一緒に包まっていたデイジーのバッグからタバコを取り出し火をつけて一服したところでエンドロール。車内ですやすやと眠るジャッキー舐めから広がる荒野をバックに車外に出たルーに徐々にピントを合わせていくこのシーンは、流れる音楽込みで最高にカッコいい!
これまで父の指示で邪魔者を何人も始末してきたルーが、その父の支配からやっと解放された途端に自分に降りかかる邪魔者を自らの手で殺めてしまうのが、なんとも皮肉なエンディングだった。
まとめ
とにかくキャラクター作りが美味いし最後の巨大化を含め演出にも驚かされた。いろんな意味で胸を打つ名作だった。ちなみにうざい女デイジー役のアンナ・バリシニコフって本作では黄色い歯で気味が悪いキャラだったが、実際はすごく可愛い!
以上です。最後までご覧いただきありがとうございました。


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