2024年アメリカ製作。原題:The Life of Chuck。
スタッフ・キャスト
| 監督・脚本・編集 | マイク・フラナガン |
| 原作 | スティーヴン・キング 「チャックの数奇な人生 イフ・イット・ブリーズ 」 |
| 音楽 | ザ・ニュートン・ブラザーズ |
| 撮影 | エべン・ボルター |
| 美術 | スティーヴ・アーノルド |
| 衣装 | テリー・アンダーソン |
| 製作 | マイク・フラナガン トレヴァー・メイシー |
| キャスティング | アン・マッカーシー モーガン・ロビンス ケリー・ロイ |
| 振付師 | マンディ・ムーア |
| 役名 | キャスト | 役柄 |
|---|---|---|
| チャック(チャールズ・クランツ) | トム・ヒルドストン | 本作主人公 |
| チャック | ジェイコブ・トレンブレイ | 17歳のチャック |
| チャック | ベンジャミン・パジャック | 11歳のチャック |
| チャック | コーディ・フラナガン | 7歳のチャック |
| マーティー・アンダーソン | キウェテル・イジョフォー | 中学校教師 |
| フェリシア・ゴードン | カレン・ギラン | マーティーの別れた妻 |
| アルビー・クランツ | マーク・ハミル | チャックの祖父 |
| サラ・クランツ | ミア・サラ | チャックの祖母 |
| サム・ヤーブロ | カール・ランブリー | 医師 |
| ジャニス・ハリデイ | アナリース・バッソ | ドラムに合わせてチャックとダンスをする女性 |
| キャット・マッコイ | トリニティー・ジョーリ・ブリス | 11歳のチャックのダンスパートナー |
| ミス・ローバッカー | サマンサ・サローヤン | ダンス部の顧問教師 |
| アイリス | ヴァイオレット・マッグロウ | ローラースケート少女 |
| ミス・リチャーズ | ケイト・シーゲル | 英語教師(生徒たちに授業を聞いてもらえない) |
| テイラー・フランク | ザ・ポケット・クイーン(テイラー・ゴードン) | 大道芸人ドラマー |
| ヴェラ | ヘザー・リンゲンキャンプ | 近所に住む女性(酸素吸入器を着けている) |
| ジョシュ | デヴィッド・ダストマルチャン | 同級生の父(世界が終末に向かうなか、ポルノサイトがダウンしたこと嘆く) |
| ジニー(ヴァージニア・クランツ) | クオリアンカ・キルヒャー | チャックの妻 |
| ー | ニック・オファーマン | ナレーター |
あらすじ
フェリシアに連絡しようとするが、“接続できません”と表示される電話を捨て、彼女の住む街へと歩き出すマーティー。
乗り捨てられた車で埋め尽くされた、まさに終末の風景の道路にも、チャックの街頭広告だけは並んでいた。
マーティーが道中で出会った、ある紳士はチャックのことを、「20人以上に尋ねたが、誰も知らなかった。世界の終わりの象徴かもしれんな」と語る。
すっかり日が暮れて、ようやく目的地にたどり着くマーティー。すると、街灯が一斉に消えて、街が闇に包まれた直後、建ち並ぶ家々の窓に、チャックの広告が浮かび上がる。恐怖に駆られたマーティーはフェリシアの家へと駆け付ける。マーティーとの再会を喜びながらも、フェリシアは彼に「そろそろよ。その時が来たの」と厳かに告げるのだった。
果たして、世界は本当に終わるのか?チャールズ・クランツ、通称チャックとは何者なのか?なぜ、感謝されているのか?39年間の意味とは?
一つ、また一つ、謎が解き明かされた時、すべての悩める魂に語りかける、もう一つの物語が始まる──。
(公式サイトより)
見どころ(ネタバレ含む)
ダンス!
最近は学校でもダンスを教えているらしいから日本人にも身近になっているんだろうけど、自分の記憶を辿ると小学校の時にみんなでやったフォークダンスが最初のダンスだ。その時代(1970年代っす)積極的にダンスをするヤツなどいないわけで、"ダンス"ってのはできれば避けて通りたい行為だと幼少期に認識させられることになる。それもあってか大人になってからも人前で踊るとなると大抵のおっさんは顔を赤くしてぎこちなく身体を動かすくらいが関の山だろう。
だからバーで踊り出す文化の中で生活しているアメリカ人が製作したこの映画を観ると「楽しそうに踊るなー!」と文化の違いを感じる。本作は3章で構成されているが第2章「大道芸人サイコー」で登場するダンスシーンがなんといってもこの映画一番の見どころだと思う。
大道芸人ドラマーのテイラー(テイラー・ゴードン)が街角で演奏する瞬間を待っている。そこにスーツ姿でメガネをかけビジネスカバンを持ったいかにも真面目そうな会計士チャック(トム・ヒルドストン)が歩いてくる。そのまま通り過ぎると思っていたテイラーだったが、チャックは足を止めカバンを置き 2本の指を空に向けリズムを取ったと思った次の瞬間、突如としてキレのあるダンスを始める。その様子を見て徐々に人だかりができ始める。観客の中に大学生ジャニス(アナリース・バッソ)の姿があった。オトコに振られてイライラとしていたジャニスのカラダはドラムの演奏に合わせて少しづつ動き出す。踊っていたチャックは その様子に気づき、彼女に近づき手のひらを上に向けて差し出しダンスに誘う。ここから2人のダンサーとドラマーの奇跡の共演が始まる!このダンスシーンだけでも圧巻で見る価値があり。
思うに こうしたダンス会場での魔法のような瞬間が多くのアメリカ人の記憶の中に残っているんだと思う。そしてその場面の主人公がもし自分だとしたら間違いなくかけがえのない一生の思い出になる。一度でもそんな経験をしてしまったら"ヒーロー"としての生活を夢見るのは当然だし、それを断念して別の道に進む決断をするには相当苦しむはずだ。この映画の主人公チャックの職業は会計士だ。ただの会計士ではなく、幼少期に周囲からダンスを称賛され魔法の瞬間を経験したのち その夢を諦め さらに死が間近に近づいている会計士だ。喜びと苦しみの経験があるからこそあのダンスシーンが感動を呼ぶ。
キング原作の映画「キャリー」(1976年)でもプロムが重要な場面になっているけど、本作でも中学校のダンス大会での11歳のチャック(ベンジャミン・パジャック)が上級生キャット(トリニティー・ジョーリ・ブリス)と踊るシーンがある。二つの映画でキャリーは地獄、本作では天国のように描いているので真逆なんだけど、とにかくダンス会場のエピソードがアメリカ人の中でとても重要なことは間違いない。
さらにダンスを始めるきっかけとなる幼少期のエピソードがまたすごくイイ!訳あってチャックは祖父母と暮らしているんだけど、この二人は対照的で祖父アルビー(マーク・ハミル)は数字は嘘をつかないと言って会計士の職を薦め とにかく現実的。一方の祖母サラ(ミア・サラ)は明るくて映画と音楽を愛し人生を楽しんでいる。その祖母にチャックはダンスを教わる。キッチンで音楽を聴きながら夕飯の準備をしている祖母サラの身体が自然と動きダンスを始める。そしてそれを見ていたチャックに近づき手のひらを上に向けて差し出しダンスに誘いキッチンで二人は踊り始める。さらに「雨に唄えば」、「キャバレー」「オール・ザット・ジャズ」「カバーガール」など多くの名作ミュージカル映画を一緒に観て二人はその楽しさを共有するという幸せいっぱいのひととき。
祖父アルビーはあの「スターウォーズ」(1977年)のルーク・スカイウォーカー役で有名なマーク・ハミル!孫を愛する現実的な祖父を好演していた(もちろんフォースは封印)。祖母サラは「フェリスはある朝突然に」(1986年)でフェリスの恋人スローン役で有名なミア・サラ!こんなに素敵なおばあちゃんは他にいないよ!このおばあちゃんに育てられたら俺も間違いなくダンスを始めていたと思う。
ちなみに随分前に亡くなった我が家のばあちゃんは、熱が出た時の対処法として「おでこに梅干しを貼って解熱する」という知恵を持っていた。だから子供の頃は熱が出るといつもおでこに梅干しを貼られていた(事前に種は抜いておく)。もちろんばあちゃんから"ダンス"という言葉を聞いたことは一度もなかった。
キングファンが創った映画!
本作の監督・脚本・編集を手がけたマイク・フラナガンは原作者スティーヴン・キングのファンだとインタビューで本人が語っている。それは映画を観ていてもしっかりと伝わってくる。特に丸い屋根の下にある部屋の閉ざされた扉のシーンをすごく丁寧に描いてところにキングへの愛とリスペクトを感じた。もちろん重要なテーマでもあるしキング作品の中で描かれる「日常の中に存在する恐怖」の象徴ということもあるけどキングファンが何を楽しみにしているかを理解してその期待に応えようとしていると思う。そして閉ざされた扉の奥にある謎の正体をラストに持ってくるってのは さすがだし、そういうところがキング本人からも支持されている理由なんだと思う。ホラー作品を撮る監督としてジャンプスケア大嫌いっていう男気も最高だ。スタンディングオベーション!
まとめ
こんなに味わい深い映画はなかなか出会えないと思うので、スティーヴン・キングファンじゃなくても是非観てほしい!
以上です。最後までご覧いただきありがとうございました。


コメント