1994年に出版された村上龍の同名小説を映画化。若者とおばさんのぶっ飛んだ抗争を描いたコメディ。監督は篠原哲雄、脚本大森寿美男。キャスト松田龍平、安藤政信、池内博之、樋口可南子、岸本加世子、鈴木砂羽ほか。2003年公開作品。
あらすじ
東京調布市に暮らす6人の若者。集まった6人は夜の波止場に行き昭和の歌謡曲を歌っている。
ある日若者の1人スギオカ(安藤政信)が睡眠不足で朦朧としながら調布の街をフラフラと歩いていた。その横をすれ違ったおばさんヤナギモトミドリ(内田春菊、以下ヤナギ)に肩をぶつけられる。振り返ったスギオカは何故か立ち去っていくヤナギの尻に視線を奪われムラムラしてしまう。後を追ったスギオカはヤナギをナンパするが冷たくあしらわれてしまう。そこでカッとなったスギオカは持っていたナイフを取り出しヤナギの喉を切り裂いてしまう。(勝手っ!)
命を奪われたヤナギは全員ミドリという名のバツイチおばさん6人組"ミドリ会"のメンバーだった。残されたミドリ会の5人は復讐を誓い、おばさんVS若者たちの壮絶な戦いが始まる。
見どころ
キャスト
・6人の若者たち
それぞれバラバラの日常を送る6人が夜の波止場に集まって昭和の歌謡曲を歌う。その6人がこちら↓。2003年公開なので初々しい彼らの姿を観ることができる。
「僕たちのパーティーは例えるなら教会のミサに似ている。」
「ゴスペルの代わりに僕たちは昭和の歌謡曲を歌う!」
イシハラのこの台詞でタイトルがドーン!とあらわれて映画が始まる。
そしてこの映画は昭和の歌謡曲のタイトルで章立てされているんだけど、その第一章が「恋の季節」。有名なこの曲の発売は1968年、ちょうどオレが生まれた年の曲なんだよ。歌うのはピンキーとキラーズ!ボーカルのピンキーこと今陽子は上京し昭和の大作曲家いずみたくに師事。そのいずみたくが作曲したこの曲がデビューシングルだったんだけどなんと240万枚の大ヒット!あのヱヴァンゲリヲン新劇場版:破の劇中歌としても使用された名曲。ちなみにいずみたくは徹子の部屋のテーマ曲やゲゲゲの鬼太郎のオープニングテーマ曲など幅広いジャンルの名曲を世に送り出している大作曲家!(1992年、62歳で没)
「恋の季節」以外にも数々の昭和の名曲が楽しめる。
・ミドリ会の6人
メンバー全員がミドリという名のバツイチおばさんの6人組。樋口可南子、岸本加世子、鈴木砂羽の俳優陣に加えて、漫画家で小説家の内田春菊、さらに元アイドル森尾由美、元Fカップグラビアのふーみん(細川ふみえ)というなんともワクワクするキャスト。
このおばさんたちの行動がぶっ飛んでいてとにかく強い!若者を殺めたあとにミドリ会のメンバー宅に集まってステーキを食べながら乾杯し、怖気付いたり逃げ出すこともなく武器を入手して若者への復讐を淡々と進めていくその姿がコミカルで可愛らしく愛おしい。
個人的にはそもそも演じているのをみたことがなかった森尾由美と細川ふみえが一生懸命演じていたのが新鮮で嬉しかったのと、ふたりの相当な大根役者ぶりも堪能できてとても満足した。
若者の協力者(謎の金物屋)
埼玉県と群馬県の県境で安政5年から営業しているという謎の金物屋、広田金物店。
そこには拳銃トカレフが置いてあるという情報があり、イシハラたちはそれを信じトカレフを入手するためこの金物屋に向かう。その店主として登場するのがなんと原田芳雄!(公開当時63歳、2011年に71歳で没)あの松田優作が若い頃 当時の原田芳雄の一挙手一投足を研究して模倣したという名優(とWikipediaに書いてあった)で、コメディ作品ながら存在感がすごい。本作ではその息子松田龍平との共演しているのも面白い。
この店主 とにかくおばさん嫌いで その中でもちょっと裕福なおばさんが大っ嫌い。ちょっとネタバレするけどイシハラたちに放つセリフがイイ!
「地球滅亡した後、最後まで生き残るのはゴキブリだって言うだろ。あれウソウソ、"お・ば・さ・ん"」
まとめ
原作者が若い時におばさんとなにかあって相当恨みを持っているんだろうと感じるほどぶっ飛んだ抗争が描かれた作品。実際に村上龍は本作執筆時 絶望的な日々を送っていて精神的に少々荒れていた時期だったと語っている。(原作者村上龍のコメントより)しかし若者とおばさんの攻防は壮絶だがなぜかとても清々しい。村上龍の原作本はこちら(amazon)。
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