2016年公開の真利子哲也監督の商業映画デビュー作品。キャスト柳楽優弥、菅田将暉、小松菜奈、村上虹郎。
あらすじ
舞台は2011年愛媛県松山市の小さな港町。喧嘩をふっかけて勝つまで喧嘩を続ける主人公の芦原泰良(柳楽優弥)。その姿を見て気の弱い高校生 北原裕也(菅田将暉)は「あんた、すげえわ!オレとおもしろいことしようや」と行動を共にするようになる。
間もなく、2人の行動は目立ち始めSNSによって拡散。警察も動き出す。
行動範囲を広げるために2人は街を出ようとするが、盗んだクルマの後部座席にはキャバ嬢の那奈(小松菜奈)が乗っていた。那奈は2人の道連れとなり3人は街を出る。
見どころ
喧嘩、喧嘩、喧嘩!!!!!!
松山の繁華街を中心に生々しい喧嘩のシーンが続きます。この主人公泰良の異常な行動を柳楽優弥が演じきってます。この演技で、第90回キネマ旬報ベスト・テン 主演男優賞、第38回ヨコハマ映画祭 主演男優賞 !それも納得の演技。
喧嘩の最中、泰良は始終半笑い。そして勝った時のテンションの上がり方。
これがリアリティなのかは果たしてわかりませんが、実際、自分も若い頃にそういうシーンに出くわしたことがありました。
ある晩、居合わせた客同士が言い争いから喧嘩が始まる。
そして、周囲からの視線が集まる。喧嘩で店は大混乱。
注目を集める中、喧嘩に勝利した時、
勝ったヤツが"フォーーーーーーーーーーッ!"って叫んだんです。
このときの彼の脳内の動き、喧嘩に勝った時のテンションの上がり方。この映画の主人公と同じだったなと。自分が若い頃に見たそのときのシーンと重なり、正直ちょっと驚きました。
そもそも、
この映画の脚本は、監督の真利子哲也が、過去の撮影で訪れた松山市でバーのマスターから聞いた実話を元にして本作の脚本に仕上げたそうです。
そして、タイトルとなった"ディストラクション・ベイビーズ"はナンバーガールの楽曲"DESTRUCTION BABY"(1999年)から本作のタイトル候補に挙がり最終決定したそうで、そこで音楽もナンバーガールの向井秀徳に依頼することをプロデューサーと約束し実現したそうです。
結果、向井秀徳によるこの映画の音楽は、ノイズ感がぴたりとハマっていてすごくよかったです。
変化する2人!
この映画の見どころはやっぱり人間の変化ってことだと思います。
泰良(柳楽優弥)と出会い行動を共にするようになった裕也(菅田将暉)、その2人の道連れになったキャバ嬢の那奈(小松菜奈)。
この2人、裕也と那奈が変化していく様がこの映画の見どころです!
もともと表面的には臆病な2人。そして自分本位でずる賢い生き方を送っている。裕也は友人がボコられていても助けることもできず、さらに自分だけは喧嘩の被害から逃れる人間。
那奈はスーパーや雑貨屋で万引きを繰り返す日々。働くキャバクラではこき使われ、高校生を客として店に入れた客引きの責任を別のキャストに擦りつける有り様。
こういう人間が、異常な執念と強さで喧嘩を繰り返しす泰良をある意味味方に付けたときに現れる行動の変化。そこで顕になる人間の内側にある狂気。それが描かれます。
ちょっとキャスト(菅田将暉と小松菜奈)が綺麗すぎる感も無くはないですが、2人の狂気の演技はなかなかよかったです。
あ、他にも那奈が働くキャバクラの店員役に池松壮亮、弟将太の友人役の北村匠海、泰良と将太の育ての親役のでんでんも それぞれキラリと光る演技、よかったですね。
そして、弟将太(村上虹郎)が最後にちらっと見せる兄泰良の片鱗。。。
「うちが、何したんじゃーー! うわぁぁーーーーーー!」と言って友人に飛びかかる。
この言葉。兄の泰良が暴力に走ったのもこういうことがきっかけだったんじゃないかと思う。
将太も兄と同じ道を辿ってしまうのか?ダメだよ将太。。。その道に行かないでくれと願うしかない。
まとめ
抜け出しようのない その状況に置かれたときに人間がとる行動の恐ろしさ。たったひとつの出会いやきっかけによって、人生ってのはどうにでも転がっていくんだって、この映画から聞かされている気がしました。
ただ、この映画のラストシーンで登場する"祭"のシーン。いにしえから続く慣習的な行事の意味付けにも見えたのは私だけでしょうか。
この映画に出てくるような人間を作らないために昔の人は年に一度の祭で神輿を担ぎ、隣町とぶつかり合う。それによって日頃の鬱憤を発散させていたんだっ!スケボー(※)なんかやってないで神輿担げよ!
ていうと何とも説教臭いな。(※:この映画の若者はみなスケボーやってます。)
隣町と争ってぶつかり合う。あ! 結局どちらもやってることは同じだな・・・。じゃ、これからの若者は神輿ということで。
コメント