【映画】【ココが見どころ】カセットテープ・ダイアリーズ

映画

"ベッカムに恋して"のグリンダ・チャーダ監督作品。脚本:サルフラズ・マンズール、グリンダ・チャーダ、ポール・マエダ・バージェス。

インド系移民のイギリス人女性映画監督が、パキスタン系イギリス人ジャーナリスト サルフラズ・マンズールの伝記をもとに映画化。2020年公開。

あらすじ

舞台は1987年イギリスのルートンという田舎町。主人公のジャベド(ヴィヴェイク・カルラ)はパキスタンからの移民。友人に彼女を見せつけられ悶々とする日々、ある日友人から借りたブルース・スプリングスティーンのカセットテープを聞いて衝撃を受ける!

見どころ(うっすらネタバレ)

この映画の主人公はパキスタン系移民であることによる差別と偏見に苦しみます。それをどうやって撥ね退けたのか。

(1)逆境と周囲の人々

①逆境

パキスタン人差別

正直この映画を観て、1987年当時のイギリスでこうしたあからさまな人種差別があったと知りショックを受けました。

パキスタン人ということで玄関の新聞受けから白人の子供にションベン(あえて汚い言葉を使いました。すいません)をかけられる。そして家主は苦情を言うわけでも無く毎回のことなので仕方ないといって、玄関を入ったところにあらかじめビニールシートを引いて暮らしている!え、嘘でしょ!と思いますよね。

ほかにも主人公がファミレスでお茶するシーンで白人の若者集団に俺たちの席だと言われて隣に移動すると、体臭がキツいからもっと離れた席に座れと。。。酷すぎる。(ただ、このシーンは"バッドランズ"を歌いながらそいつらに唾を吐いて店を出るというスカッとするところですが)

家長の権力

差別と偏見にさらされた環境で生活する人々。特に主人公の父親を含めたその世代の人々はそれに耐えるしか道がないと考え、差別と偏見に抵抗するどころかそれを受け入れて生活を続けている。そして子どもたちにもそれが生きる術だと言い聞かせる。

イスラム教、ムスリムの世界では家長である父親が絶対の権力を持ち、男性が女性に服従を求める権力構造。現在ではそうした構造も崩れてきていると思いますが、当時は父への反抗も許され難い状況。

ここから生まれる閉塞感。。

②周囲の人々

そんな中でジャドベを支える周りの人々がすごくよく描かれています。

となりのおじさんミスター・エヴァンズ(デヴィッド・ヘイマン)

彼はある晩ジャベドの家に訪ねてきます。

イギリス国民戦線(白人至上主義政党)について書いたジャベドの詩(国民戦線のクズ)を読んで訪ねてきたと言います。ジャベドの父は苦情かと思い取り繕おうとしジャベドに謝罪するように言いますが、それを遮ってエヴァンズさんはその詩に共感したこと告げます。勇気ある行動だと讃え、そしてこれからも詩を書くようにジャベドに勧めます。

実はエヴァンズさんは元イギリス軍人。第二次世界大戦でナチスドイツと戦った経験を持っていました。そして最近周囲で目にするの鉤(かぎ)十字をかざした白人至上主義者たちに対して怒りの気持ちを持っていた。その気持ちはムスリムであるジャベド家族と同じだったんです。

文学の先生ミス・クレイ(ヘイリー・アトウェル)

周囲に言いたいことを言えないジャベドに対して、うちに秘めるものを吐き出すように促します。先生に激励されて、内向的なジャベドが少しづつ積極的に変化していきます。

(2)ブルース・スプリングスティーン

この映画はイギリス人ジャーナリスト サルフラズ・マンズールの自伝(Greetings from Bury Park: Race. Religion. Rock ‘n’ Roll)に基づく物語です。

実際、作者はブルース・スプリングスティーンと出会って人生を一変させていますから、全編通じてブルースへの熱い思いがほとばしっています。

私の話ですが、

ブルースの大ヒットアルバム、ボーン・イン・ザ・U.S.Aが発売された1984年。当時高校生でアメリカの華やかさに憧れていた私はテレビで流れていた曲とこのアルバムのジャケ写を見てカ、カッコ良すぎる!と衝撃を受け、自転車で近所のレンタルレコード店"友&愛"(という店がありまして)に向かい、レコードを借りて家に帰り、自宅のレコードプレーヤーにレコード盤を置きドキドキしながら針を落とした記憶があります。(๑˃̵ᴗ˂̵) あ、もちろんそれを聴きながらカセットテープに録音します。

スマホも音楽配信もYouTubeも無い時代、聴きたい曲を聴くにはレコード店で購入するかレンタルレコード店で借りるかしかありませんでした。もちろん庶民の私はもっぱらレンタルレコードでした。この映画で最初に主人公が聴く曲もこのアルバムの収録曲"Dancing In The Dark"でしたね。

「英語の歌詞」

改めてですが、この映画を観ていて主人公のことを羨ましいなと感じたのは、英語で直接耳から曲と歌詞が入ってくるところです。私はライナーノーツ(レコード付属の冊子)を見ないと歌詞がわかりませんでしたし歌の内容も日本語の訳詞を見て初めて理解できるというこの言葉の壁。この壁大きいですよね!英語圏のイギリスで暮らす彼らにはそれが無いってのはすごく羨ましいことだなと思いました。

恥ずかしながら、

この映画を観てブルースがどんな内容を歌っていたのかを知りました。あ、この曲ってこんなこと歌ってたんだ、って。この映画も字幕があって初めて意味がわかるので、ありがとう"字幕"!ということなんですが、音楽もそうやって聴けたらイイな!ってつくづく思います。

まとめ

人種差別や宗教上の問題は重くなりがちですが、グリンダ・チャーダ監督はミュージカル的な要素を入れて明るい作品に仕上げています。閉塞をぶち破りたい音楽好きにおすすめです!

80年代が舞台のイギリス映画に"シング・ストリート 未来へのうた"がありますが、こちらも不況にあえぐアイルランドの青年が夢を抱きロンドンを目指す物語。80年台のヒットソング満載でおすすめです(この映画の見どころはこちら)。

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