ジョナサン・ラーソン原作、作詞、作曲の傑作ミュージカルを映画化!ハリーポッターシリーズのクリス・コロンバス監督、ミュージカル開幕時のメンバーが多数参加、2006年公開作品。
あらすじ
舞台は1989年のアメリカニューヨーク、家賃が安い集合住宅に暮らす芸術家たち。貧しい彼らは家賃の支払いも厳しく都市再開発計画により住みかを奪われそうになる。さらに彼らのコミュニティでは同性愛者が多くエイズの脅威が迫っていた。そんな彼ら芸術家とその友人たちがなんとか生き抜こうとする様を描いた作品。
見どころ(ポイント)
見どころを書く前に、まず。。
この映画はミュージカル映画ってこと。
ミュージカルってそもそも好みが分かれるし、いきなり歌い出したり踊ったりするということに耐えられない人もいると思います。私はそういったことは無いですが、観る前には必ずミュージカルを観るスイッチを入れています。映画にはさまざまなジャンルが存在しますので、ホラー映画だよとか最低限の情報は必要ですよね。特に役者がいきなり歌い出すミュージカルとなればそれを知らずに見始めるなんてことはできません。
そしてこのミュージカルの原作はイタリアの作曲家ジャコモ・プッチーニのオペラ"ラ・ボエーム"。オ、オペラが原作。。なんか敷居が高い。。。["ラ・ボエーム"。ん?ってことは、あのイタリアンレストラン(カフェ)はこの名前から取ったのかな?っていう程度の恥ずかしい知識レベル]映画は1989年の設定ながら要所に原作"ラ・ボエーム"のシーンが散りばめられています。
さらに、
ドラッグやエイズという重めのテーマを題材にしているので、日本で暮らす我々の現実からは、どんどんどんどん離れていきます。そして30年以上前の舞台設定。
ここまでくると、もう映画としてリアリティをもって観るのは無理です。となると、相当に想像力がポイントになってきます。それによって鑑賞後の感想も変わってくる気がしましたので、私が思う押さえておくポイントと見どころを書きます。
(1)時代背景(1989年)
エイズのこと
この映画の舞台は1989年のアメリカニューヨーク。
当時、多くの著名人がエイズでこの世を去りました。そして亡くなった著名人はみな同性愛者だったことで、この病気が同性愛者限定の感染症とみられアメリカ国内の死者が増加した中、対策が遅れていた。いまのコロナのような感染予防対策もわからないしワクチンや治療薬も無い中、得体の知れない謎の病で身近な人々が亡くなっていく状況。
アメリカ政府が動いたのは4年後の1993年、クリントン政権になってからやっと重い腰を上げホワイハウスにエイズ専門部署を設立。そこから研究開発が進んで3年後の1996年に多剤併用療法が開発されたことで、現在では死者数も大幅に減少。(アメリカの政策についてとやかくいうつもりは無いですよ)
year | アメリカ大統領 | 所属政党 | エイズ関連の出来事 |
1983 | レーガン | 共和党 | クラウス・ノミ死去 |
1985 | レーガン | 共和党 | ロック・ハドソン死去 |
1989 | ブッシュ(パパ) | 共和党 | ロバート・メイプルソープ死去 |
1990 | ブッシュ(パパ) | 共和党 | キース・ヘリング死去 |
1991 | ブッシュ(パパ) | 共和党 | フレディー・マーキュリー死去 著名人のレッドリボン運動開始 |
1993 | クリントン | 民主党 | ホワイトハウスに エイズ専門部署を設立 |
当時の日本は?
ちょうど昭和から元号が変わった平成元年。日本国内でエイズと言ったら完全によその国の話。当時の私も知識も乏しかったせいか身近な病気という緊迫感はほぼ無かった記憶です。
で、ホワイトハウスにエイズ専門部署が設立されたのと同じ年、東京原宿にHIV感染予防の啓蒙するコンドーム専門店"コンドマニア"がオープン。
とはいえ当時日本のHIV感染者数は124人(エイズ予防財団 エイズ予防情報ネットより)。よほど感度が高い人以外は危機意識がまだまだ低い中でのオープンでした。調べたところ現在も営業を続けていました。30年近く営業しているというのはある意味すごいことですね(移転したようですが)。
そこからさらに5年後、1998年(平成10年)に「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」が制定。それに基づき翌年に「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針」が策定されて、ようやく日本が国としてどうしていくか方向性が示されました。そこには偏見を無くすなど人権の尊重についても謳われ(うたわれ)ています。
話は戻って、
この映画の舞台 1989年当時のアメリカ ニューヨーク、コンドームを使用することがHIV感染予防になるという情報だって当時は行き渡ってない状況の中、貧しく、同性愛やHIV感染に対する偏見にさらされ、エイズという謎の病で周りの友人たちが次々に死んでいくという恐怖の中で生きていた!
なんだか書いていてとても暗い気分になってきました。が、
こうした時代背景を知ってから観ると、ちょっと見えかたも変わってくるんじゃないかと思いました。
(2)とにかく歌の力!
歌、歌、歌です。
前述の通りミュージカルの知識などほぼセロの私ですが、歌のパワーに圧倒されました。オープニングの"シーズンズ・オブ・ラブ"!でまず感動して震えます。
登場人物 | キャスト |
マーク | アンソニー・ラップ |
ロジャー | アダム・パスカル |
ミミ | ロザリオ・ドーソン |
トム | ジェシー・L・マーティン |
エンジェル | ウィルソン・ジャメイン・ヘレディア |
モーリーン | イディナ・メンゼル |
ジョアンヌ | トレイシー・トムズ |
ベニー | テイ・ディグス |
ファイブハンドレッド トゥエニファイヴツァウザン スィクスハンドレッドミィィィィニッツ。ここ!歌いたくなる!でも歌ってみると舌がもつれて歌えない。みんなきっときっと歌おうとするはず。カッコよく歌えたらちょっと自慢できると思います。
そういえば言いたくなるセリフといえばワンポイントトゥエニワンジゴワッツ(バック・トゥー・ザ・フューチャー)もありますね。
近い感じです。全然近くないか。(歌でも無いし)
あとジェシー・L・マーティンのマーヴィン・ゲイ感、アダム・パスカルのジョン・ボン・ジョヴィ感が面白かったです。
このミュージカルは作品はトニー賞3部門、ピューリッツァー賞 戯曲部門も受賞し当時世界各国で絶賛されたそうですが、歌っている役者の歌唱力もさることながらこの曲をほぼ一人で作ったジョナサン・ラーソンってやっぱりすごいと思います。
7年の歳月をかけて曲を作りミュージカルとして世に出た訳ですが、開幕を目前にした1996年1月に胸部大動脈瘤破裂で35歳の若さでこの世を去ってしまう。伝説です。
もっと知りたい人はそのラーソンの自伝的映画、tick, tick…BOOM! チック、チック…ブーン!も観るしか無いですね。
まとめ
ミュージカル開幕から10年を経た2006年に本作公開。傑作ミュージカルを開幕当時のメンバー参加で製作された作品。歌の力をぜひ味わってほしい。
52万5,600分、人生の1年を愛で計ってみる。私がこの映画に愛を注いだ時間 → 見た時間とブログを書く時間を入れて855分。
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