デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督脚本のホラー。2014年アメリカで製作され、日本では2016年に劇場公開された。この映画めちゃくちゃ怖い!
あらすじ
19歳の女子大生ジェイは付き合い始めた彼氏ヒューと初めてのセックスをしたあと、彼からあるものを感染したと告げられる。①それは自分にしか見えない。②ゆっくりと歩いて追ってくる。③姿を変えて追ってくる。④追いつかれたら殺される。⑤セックスをすればその相手に感染せる。⑥感染した相手が死んだら再び自分に戻る。
そいつから追われることになったジェイは友人達に助けを求め自分が陥った状況を説明するが、彼らにそいつの姿は見えない。いつ現れるかわからないそいつの存在に怯えながら生活を送ることになる。
スタッフ・キャスト
監督・脚本 | デヴィッド・ロバート・ミッチェル |
製作 | レベッカ・グリーン ローラ・D・スミス デヴィッド・ロバート・ミッチェル デヴィッド・カプラン エリック・ロメスモ |
撮影 | マイク・ジオラキス |
編集 | フリオ・C・ペレッツ4世 |
音楽 | ディザスターピース |
美術 | マイケル・ペリー |
役名 | キャスト | 役柄 |
---|---|---|
ジェイ | マイカ・モンロー | 主人公の女子大学生 |
ポール | キーア・ギルクリスト | ジェイに心を寄せる幼馴染 |
ケリー | リリ・セプ | ジェイの妹 |
ヤラ | オリヴィア・ルッカルディ | ジェイの友人 |
グレッグ | ダニエル・ゾヴァット | ジェイの隣人(女好き) |
ヒュー/ジェフ | ジェイク・ウィアリー | ジェイにそれ(IT)を感染した男 |
アニー | ベイリー・スプライ | 最初の犠牲者 |
グレッグの母 | レイサ・プリド | |
ジェイの母 | デビー・ウィリアムス | |
近所の少年 | チャールズ・ガートナー | ピーピング少年 |
ジェフの母 | ルビー・ハリス |
見どころ
本作の舞台はアメリカのミシガン州にある最大の都市デトロイト。かつては自動車産業で栄えていたが2013年に財政破綻し貧困が進んでいる街。デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督の出身地がミシガンということもあり前作アメリカン・スリープオーバーに続きデトロイトを舞台に選んでいる。
ただゆっくり歩いて近づいてくる怖さ!!
そいつはただただ自分に向かってまっすぐに歩いてくる。そして普通の人間の姿や知人の姿で現れる時もあれば、時には明らかに様子がおかしい姿で現れる。特に様子がおかしい状態でゆっくり歩いてくるそいつは現実に近い分、モンスターものやゾンビ映画を超えてくる怖さがある。
ナメているとやられるので注意!
前作から引きずる甘酢っぱさ
本作の監督・脚本のデヴィッド・ロバート・ミッチェルが2010年に思春期ど真ん中を描いた前作「アメリカン・スリープオーバー」(原題:The Myth of the American Sleepover)。小さな一歩をなかなか踏み出せない悶々とした若者たちの映画で、それはもうとにかく甘酢っぱかった。観終わった直後は正直なところ50代の半ばを過ぎた俺にはこの映画の前に進めない感じがもどかしくてイライラするだけだったが、次の瞬間、記憶の遥か彼方にしまい込んでいたほろ苦い経験が無理矢理に引っ張り出され、堰を切ったように悶々としていた思春期の思い出が一気に噴き出してきた。そして当時自分が感じていた気持ちはがこの映画の若者たちとまったく同じだったことに気づかされ映画の評価が180度変わってしまった。映画を観てこんな体験をしたのは初めで驚いたのと同時に感動した。
その甘酢っぱさは本作でも随所にあって特にジェイとポールがソファで交わす会話は最高に甘酢っぱい!そのドキドキと得体の知れないそいつに追われるドキドキの融合がこの映画の一番の見どころだと思う。
拷問には苦痛と傷が伴う
肉体的苦痛は精神的苦痛を超越し、人は傷の痛みに死の瞬間まで苦しむ
だが、
最悪の苦痛は傷そのものではない
最悪の苦痛はあと1時間 あと10分 あと30秒 そして今この瞬間に
魂が肉体を離れ 人でなくなると知ること
この世の最悪は それが避けがたいと知ることだ
これ↑は友人のヤラが読んでいるドストエフスキーの「白痴」の一節で、死に対する苦痛をジェイとポールに読み聞かせる。監督のインタビューでも生と死と愛について描いたと言っていたが、この監督の世界観から考えると思春期が終わることへの恐怖、そのメタファーなんじゃないかと勝手にそう考えている。無防備で怖いもの知らず そして無邪気に愛や性に憧れ、ドキドキとワクワクを唯一味わえたその瞬間。
そう考えるとこの映画では思春期の夢の世界から厳しい現実に引き戻す親の存在がほぼ描かれないのも納得できる。唯一、終盤の屋内プールのシーンでそいつ(IT)となって現れる父親だけだ。しかしそれは主人公のジェイが闇に葬りたい 話したくない記憶としてだけ登場する。
マイカ・モンローのもっさり感
主人公のジェイを演じたマイカ・モンローは1993年5月29日カリフォルニア生まれで撮影当時は主人公とほぼ同じ20歳そこそこ。顔は小さな恋のメロディのトレイシー・ハイドに似ていて可愛らしい。そしてカラダはくびれの無いもっさりボディー。これが思春期のモヤモヤを体現してるようでピッタリハマっている。妹ケリー役のリリ・セプもお腹がぽっこりしているからまさに最高のキャスティングだ。
それからキーア・ギルクリスト!彼は2017年にリリースされたネットフリックスのドラマ「ユニークライフ」で自閉症の18歳の青年を好演しているが、本作でもジェイに密かに心を寄せる幼馴染の青年役がハマっていて甘酢っぱさが増幅されている。
時代はいつの話なの?!
ジェイの家に置いてあるテレビはブラウン管の小型テレビ。しかもアンテナが付いている!だが、ヤラはピンクのシェル型のコンパクトな液晶書籍リーダー(売り出したら即日完売しそう)を使ってドストエフスキーを読んでいるし、クルマはレトロなスポーツカーと現代的なセダンも登場するから敢えて時代設定をわからなくしているようだ。
まとめ
本作が好き過ぎて続編製作の情報が入って興奮している。デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督には期待しかしてないっす。また甘酸っぱいのをお願いします!
以上です。最後までご覧いただきありがとうございました!
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