ジョージ・A・ロメロ監督脚本のゾンビ映画の金字塔。1979年日本公開。原題はドーン・オブ・ザ・デッド。
あらすじ
突如として死者が蘇り人間を襲い始めた。フィラデルフィアのテレビ局に勤めるフランは恋人でヘリコプターパイロットのスティーヴンの呼びかけで街から出ることを決める。友人でSWAT隊員のロジャー、別の部隊にいたSWAT隊員のピーターと共にヘリで脱出し、辿り着いたショッピングモールに立てこもり4人は生活を始めるが・・・。
スタッフ・キャスト
監督・脚本 | ジョージ・A・ロメロ |
製作 | リチャード・P・ルービンスタイン |
撮影 | マイケル・ゴーニック |
編集 | ジョージ・A・ロメロ |
衣装 | ジョシー・カルーソ |
美術 | ジーラ・クリントン |
特殊メイク | トム・サヴィーニ |
音楽 | ゴブリン ダリオ・アルジェント |
役名 | キャスト | 役柄 |
---|---|---|
ピーター | ケン・フォーリー | SWAT隊員 |
ロジャー | スコット・ライニガー | SWAT隊員 |
フラン | ゲイラン・ロス | テレビ局員 スティーヴンの恋人 |
スティーヴン | デヴィッド・エムゲ | ロジャーの友人 ヘリコプターパイロット |
怖いだけじゃない!完成された脚本
1979年世の中に「ゾンビ」という言葉が一般的ではなかった時代。死者が蘇り人間を襲い、それがウヨウヨと大量に押し寄せてくるという衝撃映像!本作の公開当時は強烈なインパクトで社会現象となり、一気にテレビ、雑誌、漫画など多くのメディアに取り上げられ、俺が住んでいた千葉の田舎にもしっかりその波が押し寄せてきて通っていた小学校でも話題をさらった。みんな両腕を前に出して「あああうぅぅぅぅーー」と言って歩きだした。もし当時、流行語大賞があったら間違いなく「ゾンビ」が受賞していたはずだ。
今となってはリメイクを含めゾンビ映画が大量に世に出ているが、基本的なプロットは全てこの映画に入っている。
大量のゾンビが押し寄せてくるディストピアの中、ヘリで逃亡しショッピングセンターに降り立ち、そこに立てこもって武器や衣類、家電や食料も選び放題という束の間の平穏で幸福な時間を過ごす。しかしそれは長く続かず暴走族集団がやってきて人間同士が争うことになる。敵はゾンビではなく人間だったというストーリー。もう完ぺき!しかも本作で最後に生き残るのはSWAT隊員の黒人男性とテレビ局員の白人女性。当時の社会問題をしっかり捉えて人種差別や性差別へのアンチテーゼとなっていて、70年代という時代に既にそれを表現しているロメロ監督に感服するばかり。
ラストシーン
ゴア描写はもちろんあるけどそれだけで押してこないところがこの映画の深いところで、ラストシーンで生き残ったピーターとフランがふたりでショッピングモールからヘリで脱出するんだけど、小学生ながらに 最後まで望みを捨てちゃだめなんだ!と教えられた気がして、いたく感動した。
が、
実はロメロ監督は当初 別のエンディングを考えていた!
そのエンディングとは、ピーターは銃で自殺しフランもヘリのプロペラに自ら頭を突っ込んで命を断つ!という衝撃的なものだったらしい。製作の中で変更されたそうだがこのもうひとつのエンディングはめちゃくちゃ絶望的なんだけど、今聞くと現実的で胸がえぐられるエンディングじゃないか!これを70年代に考えていたロメロ監督ってやっぱり天才だと思う。彼から影響を受けたというクエンティン・タランティーノがジョージ・A・ロメロの「A」は「 A fuckin’ geniusだ!」と語ったらしいがそれも納得する。
バージョン違いの存在
本作公開からしばらくしてテレビ放送された以降は録画(VHSのビデオテープ)して何度も繰り返し観て、吹き替えのセリフをほぼ覚えたくらいハマったが、そのテレビ版は惑星が爆発するシーンで始まり、サスペリアに似た音楽が使われていた記憶があった。今回改めて配信で鑑賞するにあたり①米国劇場公開版、②ダリオアルジェント版、③ディレクターズカットの3種類のバージョン違いが存在していることを知った。①米国劇場公開版を鑑賞したところ、冒頭の爆発シーンが無い!あれっ!これって何なんだと思って調べていたら、日本では②のダリオ・アルジェント版をベースとしてそこに日本オリジナルの惑星爆発などの映像を加えていて、さらにオリジナルの音楽が入手できずにテレビ放送に間に合わせるためにサスペリアの音楽を流用したという衝撃の事実を知った。サスペリア似じゃなくてそのものだったんじゃん!と。
この情報はゾンビショップの店長がやっている「日刊ゾンビ」というYouTubeチャンネルに辿り着いてそこでバージョン違いの経緯を知った。興味深すぎる!YouTubeチャンネル「日刊ゾンビ」はこちら↓
本作の10年近く前になる1968年「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」公開以降、ホラー映画監督というレッテルを貼られることを避けていたロメロ監督が満を持してゾンビ映画を撮るという企画が持ち上がり、それを聞きつけたサスペリアで大成功を収めて有名になっていたダリオ・アルジェント監督が国際配給権と引き換えに共同出資を申し出た。それが成立してヨーロッパで公開されるバージョンにはサスペリアの音楽を担当したイタリアのバンド「ゴブリン」の音楽が使われることになり、アメリカ劇場公開版との違いが生まれたらしい。
まとめ
これまでに数々のゾンビ映画を観てきた。中には核爆弾でゾンビを一網打尽に撃退してしまうような映画もあるが、個人的にはゾンビが蔓延したディストピアをできれば終わらせて欲しくないと思っている。それはゾンビ映画を観ることで一時的に今生きているこの現実社会だっていつか終わるかもしれないと 無責任に逃避できるからで そこがゾンビ映画の魅力のひとつと感じている。
本作はゾンビが蔓延したディストピアの中で わずかな希望を信じて生きてゆこうとする。もう最高です!
以上です。最後までご覧いただきありがとうございました。
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